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2023/02/02News
クラウドファンディングCAMPFIREで「Suiri/Sinri」を先行販売開始。
2023/03/22News
クラウドファンディングCAMPFIREでの先行販売終了。
2023/03/23News
サイトBASEにて「Suiri/Sinri」を販売開始。
2023/03/23News
Amazonで商品を販売開始!

Suiri/Sinri

私は、国王の命令で獅子を生け捕りにするために碧霊の森へ来た。
森の最奥に到着すると、廃屋から若そうな魔女がゆっくりと出てきた。 魔女は帽子を深く被り、無表情のまま杖を握っている。
私が剣を構えると、魔女が一瞬驚いたような表情を見せた。 その瞬間、森を写したような碧色の獅子が彼女を切り裂いた。
獅子はこちらの存在に気づくと、私の方にも切りかかってきた。 俊敏なその足で加速した体から振り下ろされる鋭い右腕。 とっさに上半身を捻り、相手の攻撃をかわした私は、その勢いで一回転し獅子の右腕を切断した。
返り血で鎧が赤く染まった。その場に倒れこんだ獅子は、苦しそうにもがいている。
「安心しろ。止血して、国へ戻ったら治療する。」
そう言って、私は睡眠薬入りの注射器を取り出した。
「…。」
わずかな声がして後ろを振り返ると、目の前が青い光に包まれた。 身体中の力が抜けていき、私は地面に倒れこんでしまった。
魔法のせいなのか、意識が朦朧とする。身体も痺れている。 そして、ついに眠りに落ちた。
目を覚ましたのは夕刻、高い空でカラスが鳴いているが、辺りはとても静かだった。 足元には獅子の右腕が落ちている。 獅子の姿はどこにもなく、血の跡だけが森へと消えている。廃屋には魔女の気配もない。
「あと少しだったのに。あの魔女は何者だ。」
暗くなっては探しようがないため、獅子の右腕を拾い上げ、仕方なく国へ帰ることにした。
「これは、処罰だな。」
目的を果たせなかった時の国王は、憑りつかれたように怒り狂う。これで何度目か。 弱い自分が悪い…。
意外にも予想は外れた。 帰還後、国王へ事の顛末を語り、獅子の右腕を差し出すと国王は歓喜した。 なぜかはわからないが、私は処罰を逃れたことに安堵し、その場を後にした。

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私は、正体のわからない強大な敵と戦っていた。
相手のことはわかっているつもりだった。 目に見えるのに掴めない…、そんな霧のようなハッキリしないものを相手にしていたんだ。
よく考えればわかったのに。こんなに単純なのに!
けど…、過去の自分は今の結論には至らなかった。それが、私の死に際の後悔。

あなたになら出来る気がする…。そう信じて、この 「物語」 を託すわ。